硯の町「雄勝」
文房四宝という言葉があります。中国文人の文房趣味のひとつで筆墨硯紙の四つを指します。
私は、普段の教室では、受講生の皆さんにたくさん練習していただきたい思いから、なるべくリーズナブルで質の良いものを選りすぐって提供しようと努めていますが、
時間のある時に、国内のそれらの産地を巡るのを楽しみにしています。
今回は、以前から、行きたかった、宮城県の雄勝にやっと行くことができました。
この辺りは、東日本大震災の際に甚大な被害を受けた場所でした。
日本一美しい海岸線と言われた海沿いは、真新しい防波堤でしっかりと守られていました。
館内に入ると、様々な型の硯石が展示、販売されています。
雄勝石は、玄昌石とも呼ばれ、宮城県石巻市雄勝町産のもの。黒色硬質粘板岩で、純黒色で、圧縮・曲げに強く、給水率が低いため、化学的作用や永い年月にも変質しない性質を持っていて、その特性を生かして古くから硯の原料として親しまれきました。
200円のチケットを購入して展示室も見学しました。
たくさんの珍しい硯石の壁面展示は圧巻。
これは、文房四宝の展示。
熊野の筆、鈴鹿の墨、因州和紙と共に巨大な雄勝硯!
雄勝石を触れるコーナー。石のきめ細やかさを体感。
全国の硯石の産地の分布図も興味深いものでした。
産地を訪ねて購入した赤間石や、那智石の情報もありました💡今回は、コレクションに雄勝石が加わるのが嬉しいです✨
悩んだ末選んだ一品✨
使うのが楽しみです!
ここで学んだ雄勝硯の歴史について少し。
室町時代の古文書には、既にこの地で産されていたことが記されていたようです。
さらに、江戸期に入ると、仙台藩祖伊達政宗公が牡鹿半島へ鹿狩りに出むいた際に、硯二面を献上したところ、いたく賞讃されたことが伝えられています。また二代忠宗公もその巧みな技に感服し、硯師を伊達家お抱えとし、硯石を産出する山を藩の「御留山」とするなど、一般の採掘を許さなかったといわれています。
このように600年もの歴史と共に、技と伝統が継承されてきた雄勝硯ですが、
東日本大震災の影響もあり、未だ厳しい環境下にあるようです。
巨大な自然の猛威にも、くじけず前を向き、一歩一歩歩みを進めている被災地の方々の姿に、硯石以外のこともたくさん学んだ気がしました。
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